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畑の終い方、農道への道

「百歳現役」なんて言葉を耳にするけれど、果たして畑仕事は何歳までできるものだろうか。最近、ふとそんなことを思うようになった。

 

周囲の先輩たちを見ていると、大きな病気や怪我さえなければ、60代までは今とさほど変わらず、しっかり畑を回していけるようだ。けれど、70歳を過ぎると、だんだんと広い面積を維持するのが難しくなってくる。作業はできても、体力との相談になる。畑の広さを少しずつ減らしながら、自分に合ったペースを探すようになる。

 

そして、多くの人が口をそろえて言うのは、80歳を過ぎたらもう畑は厳しいということ。草と競い合い、虫と知恵比べをし、天気と心を通わせる暮らしは、80歳を越えるころにはそっと終わりを迎える。


そのあとは、手の届くところに季節の野菜を少しだけ植える、そんな家庭菜園のような日々が待っている。もう「畑仕事」というよりは「土遊び」といった風情になる。

 

 

畑の時間は、まるで人生そのもの。

 

若いうちは何でも植えたくなる。けれど、経験を重ねるうちに、手をかけるべきもの、見守るべきものが見えてくる。


やがて、必要最小限のものだけが残り、その少数の作物に、深い愛情を注げるようになる。

そう思うと、いつまで畑ができるかよりも、どんな気持ちで畑に向き合うかが、これからの課題なのかもしれない。剣術は剣道に代わり、柔術は柔道に変わったように農業も「農道」に変わるだろう。