農作業が私の一日の中心であることに変わりはない。しかし、現実問題として農業一本で生計を立てるのは難しい。もちろん、将来的には農業を本業とするつもりで始めたが、実際にやってみると、もし本気で農業一本で生きていこうとすれば、体を壊し、借金を抱え、最後には田舎暮らしを諦めて都会へ逆戻り(Oターン)する未来が見えてしまう。だからこそ、農業を生計の柱にすることは、事実上、諦めざるを得なかった。
幸い、何もしなくても(過疎地という環境条件)毎月一定額が入る年金のような仕事をいただけることになった。金額は決して十分ではないが、これがあるおかげで、畑を維持しながら暮らしていくことができる。生活のために収穫を焦る必要がなくなり、無理な投資をしたり、「国は農家を支援しない」など政治的な不満を吐くこともなくなった。農業を長く続けるためには、この「無理をしない」「政治に関心をもたない」ということが何よりも大切なのかもしれない。
さて、田舎には「便利屋」という不思議な仕事がある。都会にも「便利屋」はあるが、田舎のそれは少し違う。たとえば、医者にかかり、漢方薬を買ってお金を払ったら、「ついでに名刺を作ってくれないか」と頼まれる。仕事なのか、頼みごとなのか、よくわからない取引が成立するのが田舎の「便利屋」だ。他にも、「◯◯の後援会の手伝いを頼む」といった仕事とも言えない仕事が回ってくる。こんな話は都会ではまず耳にしないし、ネットにも載らないだろう。
「あの人、何で生計立てているんだろう?」
田舎には、そんな風に思われている人がちらほらいる。でも、彼らは彼らなりに田舎の仕事の仕組みの中で生きている。農業一本では食えなくても、こうした田舎特有の「仕事未満の仕事」を組み合わせながら暮らしている人も少なくない。
